「・・・相手が初恋の人なの」


 ぴたりと髪を撫でる指が止まった。


 「初恋か・・・辛い?」


 「わかんない。でも心がぽっかり空いちゃったみたい」


 「俺、迎えに行こうか?パーティー終わった後、愛車で乗り付けてさ。そいつに今の彼氏はイケメンって見せ付けてやろうか?花嫁悔しがるだろうな」


 「出た。自意識過剰。しかも彼氏じゃないし」


 「かわいいぼたんのために一肌脱ごうって言ってんの」


 「池見先生のこと覚えてる子、絶対いると思う」


 「なおさらいいじゃん。あの時の俺はもうありえない位にもてたし」


 ぼんやりとした顔で蓮を見ると蓮はにっこりと笑った。


 それ、いいかも。


 貴公子みたいな蓮が、迎えに来てくれたら、椿は羨ましがるかもしれない。


 「そうして。約束ね」そう言ったのかどうかはその時は眠くて覚えてなかった。


 たばこと香水が混じった蓮の匂い包まれながら私は眠りについた。


 「約束な」夢の中で蓮が答えてくれた気がした。