学校祭に演劇の発表をしたり、ボランティア公演で近くの幼稚園や老人ホームを回ったり。


 しかも秋川は自分が全ての脚本を執筆するというこだわりがあり、そのメルヘン極まりない「秋川ワールド」について行けず、私は入部を断念した。


 当初はしつこく勧誘されていたけれど、「秋川ワールド」に魅了された人たちが公演が終わるたびに増えていき、今は20人の部員を抱える小劇団になったことで、私の入部は諦めてくれたらしい。


 「終わったらメールして」


 会計を済ますとレジにいる私に爽やかな笑みを浮かべる。


 女の人みたいに極めの細かい肌にくっきりとした二重、さらさらな髪、中性的なその微笑に、普通だったらもててただろうに、プラス変態という性格がネックで彼女いない歴19年=年齢になってしまっている。


 「わかった」


 胸の辺りでOKのサインを出して答えると秋川は軽く手を振って、またと店を出て行った。


 ステップを降りていく秋川を店内から少し見送り、片付けにと彼が座っていた席へと向かう。


 高校時代からくされ縁の秋川とはいつの間にかいつも近くにいる仲になった。


 相変わらず、うざいのは変わらないけど、柔らかな物腰と女みたいな外見で何だか空気のような存在に思える。


 本人には絶対、言いたくないけど友達っていう言葉がしっくりくるのかもしれない。


 そんな秋川だから気を遣って、今日はバイト先まで来てくれたのかもしれない。


 実は今朝からずっと気分が優れない。


 秋川が去ったあとのテーブルを拭きながらため息が出た。