行き交う人をぼんやりと眺めながら、夏休みだから混んでるなとか檜と映画に行ったら檜は自分の飲むものしか買ってこないよなとか考えていたら、行き交う人の中に知ってる顔を見つけた。


 わらびとよもぎくん?思わず反射的に後ろを向いてしまった。


 気付かれてないよね?


 ちらりと横目で確認したら2人はすでにポップコーンと飲み物を持って、シアターのある奥へと歩いて行った。


 「きのこちゃん?」


 後ろから声を掛けられびくんと体が強張った。


 振り向いたら桂さんが待っていた。


 「行こうか?」


 「場所ってどこでしたっけ?」


 「シアター5だね」


 わらびたち、同じ映画見るわけじゃないよね?


 ドキドキしながらシアターに向かう。


 席に着き、周りを見渡した。


 ここから見る限りでは見当たらない。


 よかった、違うシアターみたいだ。


 これだけ人で埋まってるし、映画が始まったら暗くなるし、万が一同じ所にいるとしても多分解らない。


 大丈夫。


 そう言い聞かせて深く席に座り直した。