「もうすぐ終わるんだけど、きのこちゃんヒマ?よかったらお茶でもどう?」


 返事をする前に後ろから「サボってんな!」と声が掛かり、定位置に戻っていく桂さんに駅ビルの本屋にいますと声を掛けた。


 振り向きはしなかったけど桂さんは手を振って答えた。



 参考書を購入して雑誌を立ち読みしていると、後ろから肩を叩かれた。


 振り向くと私服に着替えた桂さんが笑顔で立っていた。


 初めて桂さんに会った時のボロボロのTシャツとジーンズ姿だったけれど、今日はポロシャツにバミューダパンツとカジュアルな格好に変わっていた。


 細身のパンツは細いけれど筋肉が程よくついている桂さんによく合っていた。


 ゆったりとした服を好む檜とは服のセンスが違うんだ・・・


 「お疲れ様です。暑い中、大変ですね」


 「時給がいいからね。倒れない程度に頑張るさ」


 桂さんの後について、駅ビルの中の喫茶店に入った。


 私がクリームソーダを頼むと向かいに座る桂さんが「子供みたい、かわい
いの頼むんだね」と笑った。


 恥ずかしくて下を向くと、桂さんは「俺はアイスコーヒー」と続けた。


 檜だったらきっと同じものを頼んでたはず。


 「きのこちゃんってこの辺に住んでるんだ?」


 座り心地のいいソファに腰を沈めて、ようやく汗のひいた桂さんが訊ねた。