恋するplants



 檜はお兄ちゃんが大好きで、檜が言うには大学を休学して「自分探しの旅」に出ているんだと旅先からの絵葉書を誇らしげに見せてくれたことがあった。


 確かナイアガラの滝の写真だった。


 あれはいつだったかなと記憶を辿る。


 誰かに似ている、そう思ったのは誰でもない檜だったのだ。


 兄弟なのだからあたり前だろう。


 大学生+海外で旅=檜の兄と何で結びつかなかったんだろう?


 檜の後ろに立つその人を上から下へと見る。


 出逢った日と同じような大きなバックパックを背おっているものの、散髪してすっきりした顔を見ると、切れ長の目、高くて大きな鼻、きれいな歯並びは檜のそれととても似ていた。


 お兄ちゃんの方が背が高く、歳が離れている分だけ大人っぽく見えた。


 桂さんは切れ長の目を見開いて私を見ていた。


 驚くのも当然だ。


 数日前、一夜を共にした相手が自分の弟の彼女だったんだから。


 何か言いたそうにもごもごと口元が動いた桂さんを遮って、


 「は・・・初めまして、も・・・森野きのこです」


 無理矢理に自己紹介を始めた。


 彼もきまずそうながら、初めましてと返してくれた。


 「あ、そうだ。飲み物だったな・・・きのこ、麦茶でいい?兄貴も何か飲む?」