「そんなに俺と一緒にいたいのか?かわいい奴」
とおでこにキスした。
今度はにっこりと微笑み、飲み物持ってくるとTシャツを被ると部屋を出て行った。
私はおでこのされたキスの余韻に浸りながら、天井を見上げた。
何故かケイさんの顔が浮かんだ。
彼氏の部屋にいて、彼氏と寝た後で、一度だけ浮気した相手が浮かぶなんて、私って悪い女なのかも・・・そんなことを考えながらゆっくりと服を着た。
ベッドに座り、檜がキッチンから戻ってくるのを待っていると、薄手のカーテンがかかった窓の外に人影が通るのが見えた。
檜はマンションの3階、エレベーターから出てすぐの301号室に住んでいて、通路側に面した檜の部屋からはたまに住人の往来するのが見える。
ところが人影が通り過ぎて行ったと思ったのつかの間、がちゃりと玄関の扉に鍵が差し込まれた音がした。
檜のお母さんかな?でも今日は帰りは遅くなるって檜が言ってたのに・・・さっきの人影だとしたら、檜のお母さんとは思えないけど・・・。
鍵が開いたものの、人物が入ってきた雰囲気はない。
がちゃがちゃとドアノブを動かす音がした。
そういえば、家に入る時に檜がチェーンをしていた。
扉の外の人はチェーンがかかってて中に入れないんだ。
「誰?」
誰かが来たのに気付いた檜がリビングから声を上げ、ぱたぱたと廊下を歩く音がした。
私は静かに聞き耳を立てる。

