「ライブお疲れ様でした」


 冷えたスポーツドリンクのペットボトルを差し出した。


 ありがとうと爽やかな笑みと共に受け取る。


 「最後の曲、今まで聴いた中で一番良かった」


 率直な感想を述べる。


 ああいう曲ばっかり書いたらいいのにとも思った。


 小山紫苑ははにかみながらペットボトルの蓋を開けた。


 「春風の春と小山紫苑の紫苑を取って春紫苑・・・それがビンボウ草なんて呼ばれてることも知らないで、嫌がらせかと思いました」


 「そっか・・・だよな」


 小山紫苑は少し落ち込んだように頭をかいた。


 「でも、歌に書いた気持ちは本当なんだ。君が好きなんだ。今日で春風さんのこと諦めるつもりだったけど、やっぱり・・・」


 急に真面目な顔をして小山紫苑は私をじっと見つめた。


 オレンジ色の夕日が彼を包んで瞳を茶色に輝かせてた。


 キレイだなそう思った。


 「気持ちはすごく嬉しいです。正直、さっき歌を聞いた時、涙が出ました。でも、私、まだ、芹のこと、忘れられない。小山紫苑は私が芹を忘れられるまで待ってくれるの?」


 「君が僕のものになるのなら・・・」


 小山紫苑は優しく微笑むと私の髪に触れた。


 この人だったら・・・私は素直な自分でいられるだろうか?


 じっと小山紫苑を見つめた。


 芹を忘れられる位、この人を好きになることが出来る?夏休みは始まったばかりだ。





     (恋する学園アイドル おしまい)