みんなが呆気にとられた顔をして、楠を眺めている。


 「でも、この間のことは私が悪かったから。髪切っただけじゃ、自分の気が済むだけだって解ってるけど・・・反省の気持ちだから!」


 楠はそういうと頭を下げた。


 小山紫苑に傷を負わせてしまったことこんなに後悔してるんだ。


 「楠さんが言ってた通り。私自分がかわいいこと知ってるの」


 私の言葉に楠が顔を上げた。


 「小さい頃から周りに持てはやされて輪の中心にいたの。だから、かわいくていい子をずっと演じてたんだ。ホントの私は自分の容姿を棚に上げて、見下してしまうような最低な性格なの。全部、あなたの言ってたこと当たってる」


 「春風さん」


 マルタが心配そうな声を上げた。


 そんなマルタを制して私は続ける。


 「でもね、こんな私でも、失恋したり、クラスの女子に無視されたりして、今まで経験したことのない気持ちも感じれるようになった。だから、今まで高慢だった自分を変えたいってそう思ってるの。私もあなたのこと嫌い。でも、これからいいところを探して仲良くなりたいって思ってる」


 まっすぐ楠を目を見てそう告げた。


 楠はくすりと笑った。


 その笑顔が私たち2人の間にあった氷の壁を溶かしてくれるきっかけになるだろうそう確信した。


 「ホント、その笑顔で何人の男子を泣かせてきたの?紫苑様を泣かせたら許せないんだからね」


 楠はそう言うと口元に笑みを残したまま、自分の席へと戻って行った。