「訊いてるんだから答えて」


 沈黙。


 楠の表情が困惑に変わる。


 初めて見る私の一面にビビってるのだろうか?


 楠の後ろ数歩下がった辺りにクラスの女子、廊下の反対側には私を追いかけてきたマルタとクラスの男子が固唾を飲んで見ている。


 「・・・いい気味、今まで散々、調子に乗ってた罰だよ」


 楠は薄っぺらい笑いを浮かべでそう言った。


 ふつふつとこみ上げていた怒りが楠の一言で爆発した。


 「調子に乗ってんはどっちだよ!勝手に僻んで、いじめみたいなことして喜んでんじゃねぇよ。顔だけじゃなくて、性格もブスだな!」


 私たちを取り巻くクラスメイトたちが唖然とした表情になった。


 ナズナちゃん?・・・男子の1人が呟いたのが聞こえた。


 怒りで地が出た。


 今まで必死に守ってきた春風ナズナの虚像が崩れていく。


 でも、もうそんなのどうでもいい・・・


 「・・・見た?これが春風ナズナの正体だよ。今、完全に上から目線だったよね?」


 楠は同意を求めるように女子を振り返った。


 誰も何も言わなかった。


 楠はこちらに向き直る。