いつからだろう、反対側のホームにいる彼が気になったのは。


 名前も知らない私の王子様。


 王子様と命名するだけあって、彼はかなりかっこいい(と思う)。


 釣り目だけど大きな目や、すっとした鼻立ち、赤い形のいい唇。


 緩やかパーマのかかった黒髪。


 程よく高い身長。


 彼を形作る1つ1つのパーツの全てが私の好みだった。


 そして、私は偶然、彼を発見することができた自分の視力にも感謝している。


 きっと前世はマサイ族だったに違いない。


 ちなみにマサイ族はアフリカに住む民族で、視力が6・0くらいあるらしい。


 「私は隣の茶髪の彼がタイプだな~」


 ゆかりの隣でエリカが言う。


 エリカも同じクラスの親友で、仲良し3人組なのだ。


 「え~、目細すぎない?」


 ゆかりが反論する。


 私の王子様には、背の高い茶髪の友達がいる。


 今日も彼の隣には茶髪の友達がいる。


 目が細く、いつも笑顔の彼の友達もカッコいい方だと思うけど、やっぱり王子様には適わない。


 彼の友達はエリカとゆかりが噂していたのを感じたのかくしゃみをした。