海崎が出て行って直ぐ。
俺は流しに駆け寄ると、胸を押さえた。
……気持ち悪い。
「……っ……うえっ……。」
ぼとぼとと、口から溢れ出す それは、胃液と――僅かな血。
1度 吐くと、中々 止まらなかった。
(……傷付けた、だろうな……。)
きっと海崎は、自分は好かれていないと思っただろう。
違う、違う。
海崎のキスは、あいつの それとは違い、優しくて。
でも脳裏に浮かんだのは、
あいつの醜い笑み。
……気持ち悪い。
……気持ち悪い。
吐き気が、おさまらない。
――怖い。
あいつが この家に居るような気がして、吐きながら、周りを見渡してしまう。
大丈夫。
あいつは、此処には居ない。
そう自分に言い聞かせても。
吐き気は中々、おさまらなかった。