机から僅かに覗くノート。

何となく気になって、その席迄 歩み寄り、私は どきっと した。

此処――椎名君の席だ。

椎名君は、部活に所属してはいない。

けれど本人は、文化祭の準備を する義務等 無いと言う、平然とした雰囲気で、直ぐに帰宅してしまうし、クラスメート達も、その姿を黙認している。

だから彼は もう、此処には居ない筈だ。

私は教室内を見渡す。

勿論、誰も居ない。

次いで、廊下に誰か居ないか耳を澄ますが、何の音も聞こえなかった。

意を決して、ノートを開く。

(……これが、椎名君の字……。)

パソコンで打ったように整った字。

でも何処か癖が在って。

ノートの取り方 綺麗だなぁ、なんて思った時。

教室のドアが、がらりと音を立てて開いた。