「ね、桜さんてさー、暗いよね。」

「桜さんって、誰?」

「うっそ、知らないの?おんなじクラスだよ?」

「えっ、嘘!どの子?」

「あの子。ほら、あの金髪の。」

「あぁ……あたしも喋った事 無いなぁ。」

私は必死に、その会話が聞こえてない振りを する。

脳裏に浮かぶのは……思い出したくない、辛い記憶。

皆が、私を笑っている……。

――また、始まるかも知れない。

私は、まだ真新しい教科書を握り締めて、躰が震えるのを押さえた。