目の前の光景を見て、息を飲む。
葵ちゃんを護る為なら、自分は どうなっても良いと思った。
だけど、私の躰には、何の痛みも無い。傷も無い。
代わりに傷付いたのは。
「翔織っ!!!!」
私の喉から悲鳴のような声が出る。
私達を庇う、大きな背中。
真っ直ぐ横に伸ばされた手。
大好きな その人の躰から、赤い鮮血が飛び散っていた。
祐貴さんですら、僅かに目を見開いた。
それ程に、翔織の躰には大切なものを護ろうとする強さが漲っていた。
でも、その強さは崩れ去る。
「……馬鹿野郎……。」
掠れた声は、祐貴さんに向けられたのか、私に向けられたのか。
それとも。
自分自身に向けられたのか。
私が答えを出す前に、翔織は地面に崩れ落ちた。


