「っ!!」

葵ちゃんが小さく息を飲む。

祐貴さんは、恐ろしい笑みを浮かべたまま、私達の方を向いた。

「翔織の大事なもんは、全部ぶっ壊してやる!!ぎゃははははっ!!」

祐貴さんは発狂すると、葵ちゃんに向かってカッターを突き出した。

「止めろって!!」

曽根倉君が慌てて祐貴さんの腕に しがみ付くが、簡単に振り払われてしまう。

それでも、曽根倉君は私達を守ろうと、果敢に祐貴さんに向かって行く。

……翔織。

貴方が していた事の意味が、良く解る。

護る為に自分を傷付けるなんて、可哀想だと思ってた。

だけど、違う。

可哀想だとか、そう言う理由じゃなくて。

貴方は、自分の心を犠牲に してでも、全てを護ろうと していたんだね。

その傷付いた心と躰で、不器用に、必死に。

貴方は、私達を喪いたくなかっただけだったんだね……。

その時。

曽根倉君を壁に叩き付け、祐貴さんは私達を、ぎらぎらと光る瞳で見つめた。

そのまま、カッターで葵ちゃんを狙う。

「駄目っ!!」

私は、葵ちゃんの前に身を投げ出した。

翔織を愛し、彼が不器用に護り続けて来た世界を破壊したのは、私だ。

だから私は、自分を犠牲に してでも、翔織の大切な ものを1つでも多く護る。

私の目の前に、ぱっと赤い花が咲いた。