「――っ――。」
絞められた喉から、必死に悲鳴を上げる。
脳裏に甦るのは、真っ赤な薔薇が咲いた――両親の遺体。
その包丁で、顔を切られ、腕を傷付けられ、足を刺され。
漸く、現実味が湧いて来た。
「お前が生きていなければ、俺達は幸せに なれたんだ!!」
祐貴さんの悲痛な叫び声に、俺は全てを理解した。
俺の両親を殺したのは。
――祐貴さんだ、と。
俺の親戚は、祐貴さんと佑美さんしか居なかった。
だから俺達 家族が死ねば、その保険金や財産は、祐貴さん達の物に なる。
だから彼は、実の兄と その妻に手を掛けた。
本当なら、俺も其処で殺される筈だった。
しかし帰宅時間が遅くなり、殺人が ばれる事を恐れた祐貴さんが逃亡した為、俺は難を逃れたのだ。
他に親戚が居なかった俺は、祐貴さんの家に引き取られる事に なり、結局 彼等の経済的 負担は、益々 重くなってしまった。
だから彼は、腹癒せに俺を虐待していた。
そう言った事を、俺は その一瞬で理解した。
祐貴さんが振り下ろした包丁に、鳩尾を貫かれる――その刹那に。


