「……うっ……。」
いつものように殴られて、蹴られて。
いつものように意識を手放しかけた あの日。
普段なら絶対に有り得ない顔を、思いっ切り殴られた。
そんな事を すれば、学校に登校した時に虐待が ばれる事は、確実だった。
鼻血が ぼたぼたと垂れ、床に赤い水溜まりが出来るのを見ながら、明日 学校は どうするのだろうと冷静に考えてしまう俺が居て、怖かった。
それ程に、俺は現実世界(リアル)から目を背けていた。
自分の躰が傷付く事を、恐れなくなっていた。
「……あっ……ぐ、うっ……。」
喉を絞められて、息が出来なくなって。
このまま死ねたら、楽だろうな。
そんな事を考えて。
俺は祐貴さんが持っている物を見て、目を見開いた。
それは。
白銀に輝く――包丁だった。


