「このまま海崎と付き合って、叔父から海崎を護るか……海崎と別れて、海崎を哀しませるか。」
「どうゆう……事?」
曽根倉君が何を言っているのか解らなくて、私は彼を振り返った。
「考えても見ろよ。椎名は昔っから、喧嘩 強いんだ。」
友達が いじめられてるのを助ける為に、何人もの上級生を相手に して、怪我1つ しなかったんだ。
曽根倉君は、そう言って微笑んだ。
「そんな あいつが怪我する程、あの叔父は強い。若しくは、椎名が反撃 出来ないような弱点を握ってる。そんな奴が、あいつの友達や、恋人を見たら?」
「私達を……傷付けるかも知れない、って事?」
曽根倉君は頷いた。
「いつか こうなるって解ってたからこそ、あいつは必要 最低限の人間関係しか築かなかった。」
――…………………………………………無理だ。
告白して、ふられた時の、翔織の声が、脳裏に甦る。
あの長い沈黙の中には、今、曽根倉君が言った事が、含まれていたのだろうか。
「だからさ、俺達は、あいつから、叔父から離れて、傷付かないように しなきゃ駄目だ。そうじゃなきゃ、あいつが哀しむから。」
黙って頷く私を見て、曽根倉君は明るく笑った。
「それで、あいつが考える時間を、与えてやってくれ。」