「……慶!!何で解ったなんて言っちゃったのよ!!」
背中に投げ付けられる、葵の言葉。
「俺じゃ あいつを護れない、だって?格好付けてんじゃないよ!」
普段は冷静な舞も、椎名を罵る。
それでも答えない俺を見て、2人も遂に押し黙った。
……皆、不安なんだ。
海崎と椎名が別れるのか。
自分の叔父に、椎名は何を されたのか。
解らない事だらけで、不安なんだ。
「……あいつは。」
俺は、ぽつりと呟く。
「昔も、そうだった。」
「昔?」
葵の反芻に、頷く。
「この町から引っ越す時も、椎名は ああやって暗い瞳で、何も言わずに去って行った。」
思い出すのは、あの大きくて優しかった瞳が、鋭く、切れ長に歪んでいた事だけ。
「あいつは、全部 自分で抱え込まないと、生きられないんだ。」


