翔織に頬を叩かれたのだと気付くのに、大して時間は掛からなかった。

「…………っ。」

私は何も言えず、只 翔織の顔を見る事しか出来ない。

でも翔織は、自分が何を したのか解らない、と言う顔で、自分の左手を見つめていた。

それを見ていたら、私の瞳に みるみる内に涙が溜まり……ぽろりと零れた。

ぱあんっ!!

さっきより大きな音が響く。

気が付くと私は、翔織の頬を、張り返していた。

何も出来ない自分に やるせなさを感じて、私は翔織に八つ当たりしたのだ。

「……馬鹿っ!!」

私は翔織の赤く腫れた頬に叫ぶと、彼の家を飛び出した。