でも、私の願いは届かなかった。
放課後、急いで翔織の家に向かうと。
中から、くぐもった呻き声が聞こえた。
背筋が、凍り付く。
ドアノブを回すと、鍵が掛かっていなかった。
「……翔織……っ。」
中に入ろうとした私の腕を掴んで止めたのは、曽根倉君だった。
「俺が先に入る。」
唯事では無いと悟ったのか、曽根倉君の瞳に、緊張の色が走る。
私は頷くと、一歩 身を引く。
曽根倉君は頷いて、ゆっくりと扉を開け。
其処に在った光景に、私達は息を飲んだ。
大柄な男が、誰かを蹴っている。
床に崩れて動かない、白銀の髪。
其処には、赤い液体が点々と付いていた。
「……翔、織……?」
私の声に、大柄な男は、ゆっくりと振り返った。
「……誰だ、てめェ等。」
不敵な笑みを浮かべる彼が、私は悪魔にしか見えなかった。