終わりは突然やって来た。
いつもと同じ朝。
学校へ行く準備を して、家の扉を開けた その時。
脇から、誰かに勢い良く腕を掴まれ、そのまま家の中へ押し戻される。
その人物を見て、俺は震えを抑えられなかった。
「……祐貴(ゆうき)さん……。」
短い灰色の髪、鋭い茶の瞳、大柄で筋肉質な躰。
10年間 見続けた顔が、其処には在った。
「よお、翔織。」
彼は そう言って、不敵な笑みを浮かべると。
拳で、俺の腹を強打した。
「……かはっ……。」
息が止まる。
ポケットから飛び出した携帯が、壁に当たって こつんと音を立てた。
背を丸めて咳き込む俺を、祐貴さんは冷たい瞳で見下ろす。
「全く、逃げんなら もっと別のとこに しろよ。捜すの、苦労しなかったぜ。」
彼は俺の顎を、くいっと持ち上げる。
「あの時の続き、しようや。」
絶望に躰が蝕まれて行くのを感じる。
――俺の平穏で幸せな日々は、破壊された。