「椎名っ!!」

その言葉に、はっと目を開ける。

ひゅーひゅーと鳴る喉は、俺の物?

焦点が段々 定まって来て、俺を覗き込む顔が、2つ見えた。

曽根倉と、渡辺。

はぁはぁと荒く息を ついて、俺は ゆっくり、瞬きを した。

服は、汗で びっしょりだった。

「大丈夫か?うなされてたけど……。」

こっちへ越して来てからも、幾度と無く見た、過去の記憶。

此処迄 鮮明に見たのは、初めてだった。

「……起こしたか。」

そう囁く声が、自分の物とは思えない程 掠れている。

「別に良いけど……どんな夢を見たんだい?」

そう訊く渡辺の目から、視線を逸らす。

「……別に。起こして悪かった。」

そう言うと、2人は渋々と言った感じで布団に戻り、直ぐに規則正しい寝息が2つ、聞こえて来た。

俺は、再び寝ようと するが。

嫌な予感が、心を逆撫でする。

まさか、もう……。

海崎との別れが近付いている事を悟り。

俺は その後、眠る事が出来なかった。