「でもね、それなら、あの暗い性格も、頷ける。」
葵ちゃんの静かな声。
確かに、翔織の瞳の奥で燃えているのは――闇。
「だからね、人間不信な彼と居ても、きっと海崎は幸せに なれない。辛い想いを するだけだよ?」
でも。
でも、私。
――そんな彼が、好きなの――。
黙ってしまった私に、葵ちゃんは にこりと笑う。
「変な話して御免ね。でも、最後に決めるのは、海崎だから。」
きっと、葵ちゃんは、この話を するの、辛かった筈だ。
でも、勇気を持って、話してくれた。
「……有り難う。考えてみるね。」
……きっと、私が翔織と別れる事は、無い。
――この時は まだ、そう思ってた。