「ねぇ、海崎〜。」
「ん?」
布団の上に仰向けに寝転んだ葵ちゃんが、私に話し掛ける。
「……ヤったの?」
「……っ。」
その言葉に、息が止まる。
別の部屋で、男子達が同じような会話を しているとは知らず。
「なっ、無い無いっ!!」
慌てて抗議すると、葵ちゃんは だよね〜と笑った後、直ぐに真顔に なった。
「……海崎、あんまし言いたくないんだけど、聞いてくれるかな?」
「え、何?」
いつも明るい葵ちゃんの真剣な声に、私は緊張してしまう。
「……椎名と付き合うの、止めた方が良いと思う。」
ぽつり。
呟いた彼女に、私は どうして?と訊く事しか出来なかった。
「……椎名って苗字、此処等辺じゃ、有名なんだよ?」
「……どんな風に?」
「10年前に起きた一家 虐殺 事件。生き残ったのは、当時 小1だった息子1人。」
心臓が壊れるくらい、どきっとした。
10年前。
私達は、6歳――小1。
「……翔織が、生き残った子って事?」
「まだ断定 出来ないけどね。」
葵ちゃんは ごろんと回転し、俯せになって私を見る。
舞ちゃんは、何も言わず、黙って話を聞いていた。


