「今日は定休日でして」
シェフは店の電気を点け
私をカウンターに座らせ、自分はカウンターの中に入りエプロンを着けエスプレッソマシーンの電源を入れた。
「新作のメニューを思いついたので、食材を確認したくて店に寄ったんです」
「すいません私」
小さな声でそう言うと
「いいんですよ。実は僕、今ラテアートにこっていて……ちょっと見てもらえたら嬉しいです」
ラテアート
あぁ
あのラテの上に描く
芸術的な絵だ。
白いホイップミルクを使って、それをハートにしたりお花にしたり、ウサギとかクマのイラストもあるよね。
とっても綺麗で
飲むのがもったいないくらいの芸術作品。
シェフもやるんだ。
この長い綺麗な指で
カップにどんな魔法をかけるのだろう。
繊細な料理と同じく
ラテアートも繊細なのだろう。
シェフはエスプレッソマシーンを操り、細い金属のつまようじの様な物を操り、真剣に手を動かしていた。
私は涙を止め
黙ってカウンターで
ラテを待っていると「おまたせしました」と、満足そうにカップを差し出してくれた。
「今までで一番上手にできました」
達成感のある言葉に促され
カップを覗くと
そこには
バケネコーーー!
いやぁーー!
怖い
怖すぎるーーー!!



