抱きしめられた瞬間――…ピリッと感じた甘い疼き。


「琴葉…琴葉」

腕の中で何度も名前を呼ばれる。

静かな空間で、龍太の低く澄んだ声だけが響く。

優しく、けれどきつく抱きしめられ、私は血が逆流してしまうほどの息苦しさと、同時に身体の力が抜けていく感覚に陥っていた。



やがて、フッと腕の力が緩み、龍太の手が背中を離れまた私の頬を滑る。



龍太の顔が再び近づき

視線が絡まる。


今度は目を瞑って待った。


そのとき――…



~♪♪♪~ ~♪♪♪~


静まり返った部屋の中で携帯の着信音が響き渡った。

驚いて目を開けた私の目の前に、龍太の顔。

だけどその視線はソファーの上にある携帯を睨んでいる。

「…りゅ、龍太?…電話鳴って…る」

睨んだまま動かない龍太に声をかけた。

「…ハァ――…」

深い溜め息を吐いて私から離れた龍太は、鳴りやむ様子のない携帯を取り上げた。



ディスプレイの表示を見た瞬間――…


龍太の顔が大きく歪んだ……。