――――――…


「俺は寝てるから、終わったら起こして」

映画館に入って、席に着くなりすでに寝る体勢の龍太。


ジャンケンに勝ったのは私。

なので恋愛モノの映画を観ることになった。

「ちょっと!なに言ってるの?そんなんじゃデートの意味ないよー」

そう言って龍太を無理やり揺り起こす。

「チッ…勘弁しろよ」

舌打ちをしながらも体を起こした龍太。

ちょうどそのとき館内が暗くなった。


「始まるね」

声をひそめながら龍太に話しかけた。

すると肘掛けに置いていた手を龍太の手がスッと握ってきた。


途端に跳ねる心臓。


何度も手を繋いでいるけど

それ以上のこともしているのに

映画館という、場所のせいなのか、なんだか変にドキドキしてしまう。

チラリと横目で龍太を見つめる。

スクリーンの光が龍太のその母親似のきれいな瞳にうつり込む。



今日、初めて知った。

恋愛映画が苦手なこと。


もっと―――…


こうして一緒に映画とかに行きたかった…。

また――――一緒に行きたいよ、龍太…。