ある日―――彼女に関するある噂を耳にする。


“ある大物議員の隠し子らしい―――”


こういう噂はあっという間に広がる。

もちろん、彼女の場合も例外じゃない。

本当か嘘かは別にして―――…


その噂は撮影現場にも当然流れ、彼女の意見が通ってしまうのも、そのお陰じゃないか、と思われ始めていた。

そんな妙な空気の中での撮影がうまくいくはずもなく、周囲も自然と彼女と距離を置き始める。



そんな中でもどうにか撮影を終わらせたものの、その後、彼女にその雑誌の仕事が来ることはなかったらしい――…



しばらくして、彼女とは別の撮影現場で再会した。


俺は思いきって話しかけてみることに――


「あの、俺のこと、覚えてる?」

彼女は椅子に座って軽く化粧を直していた。

「――…[RIN]の現場にいた人でしょ?」

チラリと横目で俺を見る。

覚えていてもらえたことに俺はかなり舞い上がって

「覚えていてくれたんだ!俺、作本 仁。よろしく!」

嬉しくて…――なのに彼女は。

「なにか用?――…ああ、あなたも後ろ楯が欲しい?それともお金かしら?」

――…ゾッとするほど冷たく冷めた瞳―――



あの噂は…本当だったのか―――