「じゃあ…琴葉」

龍太が作本さんの車に乗り込む。

助手席の窓を開け

「必ず連絡するから」

そう言い残して、車は暗闇の中を走り出す――…



家まで送ってもらうことになったその車中で

作本さんがプロのカメラマンだと知った。

あの名刺先は個人事務所だと。

だけど、それだけ。

それ以上はなにも教えてくれなかった。

「そのうちね」

そう言ってはぐらかされた。


私は龍太に純菜のこと、麗美さんのことを話した。

純菜のことはかなり驚いていて

「マジかよ!」

そう言いながら頭を抱えた。


ただ、麗美さんのことはわかってたみたいだった。

この名刺の持ち主が彼女だってことを

ただ、それを私に渡したことにはやっぱり驚いていたけれど…



――…気のせいかな…龍太の雰囲気が変わったような気がするのは。

柔らかい表情、優しく語りかけるその口調、そして…なによりもその瞳。

前のように冷めた瞳じゃない。

暖かい火が灯ったような、そんな柔い瞳。


それに―――…キス…しちゃったんだよね。



私、自惚れちゃうよ。

龍太はなにも言ってくれないけど…

もしも次に会えるのなら。

今度こそ、龍太の本当の気持ちが――知りたい。