「いや、急ぎじゃないから」 そう言って、いつもの優しい笑顔を浮かべている。 「それより萌。昼間はごめんな。おとなげなかったって、反省したよ」 「ううん。私こそ、ごめんなさい。調子に乗っちゃって」 たぶん、崇史さんにお灸を据えられたんだろうな。 すると、雅貴は私を優しく抱きしめた。 「でも、やっぱり面白くはないな。萌から他の男の話を聞くのは」 「本当?嬉しい…。でも、安心してよ。私は何もかも、雅貴が初めてなんだから」 そうだよ。 “雅にぃ”って呼んでいた頃から、私には雅貴だけ…。