深層融解self‐tormenting

「私は華音(かのん)。春臣の隣人。今日は春臣に数学の課題教えてもらう約束だったんだけど!!早く起こせよ」

「お前、中学生?」

「高3!!東高校の!!」



華音と名乗った奴は失敬なとばかりに憤慨して、文字通り地団駄を踏んだ。

ここまで幼稚な意思表示する奴がマジで高校生かよ?


むきゃーッと騒いで、華音はズカズカと宮藤サンの家に上がって行った。

中学生扱いしたのが面白くなかったのか?俺のことは眼中にないご様子だ。


「春臣早く起きて勉強教えろよ!!」


華音は宮藤サンの胸ぐらを掴み、ぐらぐらと揺さぶりながら大声で喚いていた。

二日酔いにあれはキツイだろうに。

それよりコイツの口の悪さは何とかなんねーのか?黙ってりゃ愁いを含んだ美少女で通るだろうに勿体ない。


「っあー…?華音ん?」

「起きろよ女っ誑し!!早く勉強教えろ!!今度の小テストで点獲らないとヤバいんだよ!! 」

「なんだっけ?物理?」

「数学だっつんてんだろ!!1人で勉強しててもわかんねーんだよ!!」

「いや、威張って言えないからね、そういう事は」


くぁ、とでかい欠伸を漏らしながら、宮藤サンが俺の方をを見た。


「数学ならあっこの櫻君に聞け。アイツあれでも数学の教師だから」

「春臣の方がいい。アイツなんか神経質そうでヤダ」



初対面なのになんつー言われ様?


でも、強気に睨み付ける小動物の様な仕草が可愛過ぎる。 ちょっかいだしてからかいたくなる。てか苛めたい。


「教えてやってもいいですけど?ただしテメーには見返りを要求すんぞ」

「見返りって何をだよ?」

「さあねぇ…。考えとく」


俺をさも胡散臭げに見た華音は口を尖らせて吐き捨てた。


「やっぱお前やだ。春臣に教えて貰う」

「いいからぐだぐだ言ってないで教科書筆記用具持って来いや」


ぶつぶつ文句を言っていた華音にテストの点数の件をちらつかせると、渋々ながら大人しくなって教科書類を持ってきた。