翌日の放課後。学校からの帰り道で、珍しい人から携帯に着信が入った。
「え……温和お姉さん!?」
『ふふ。お久しぶり、華音ちゃん。蒼季からお付き合いの事は聞いてるけど、お元気そうで何よりだわ』
ふお!! 温和さんだー!
良かった。この人の声を聞くと、安心する。
『今日は華音ちゃんにお願いがあって電話したんだけど……。華音ちゃん、今日の夜は暇かな?』
夜?用事は何も無かったけど……。
「特に無いです。何かご用、ですか?」
私がそう言うと、温和さんはホッとした様子で『良かったー』と呟いた。
『あのね、私が今日から二泊で京都に出張になっちゃって。それで、蒼季は一人だと三食食べないから、夕食だけでも華音ちゃんが行って作ってくれれば…って。急だけど、お願いできないかな?』
先生に、手作りごはん!?
「行きます!何か買っていくものとかありますか!?」
興奮気味にそう捲し(まくし)立てると、苦笑した温和さんが『冷蔵庫には何も入ってないのよね……』と、困っていた。
『お金は蒼季から貰って。じゃ、本当にごめんね。お願いします』
そう言って、通話は切れた。

