先生に笑いかけてるその女の人は、誰?

いきなり初対面なのに、そんな事を聞けるわけないし。


だけど、その光景を無視して別の場所で頭を冷やす、なんて高度な心理学は私には無い訳で。



となると、自然に足は先生の元へ向かっている。


「せん……」

「ああ!お前は本、あったのか?」


私の言葉を遮るように、先生に一方的に話しかけられた。


「うん。ワイナリーに関して。一冊にまとまった本が無いんだよね。やっぱネットで調べるかなぁ」

「自分でも調べようとしてんのか?偉いな」



気になってはいたけど。

先生は、なるべく女の人とは話をしないように背を向けている。

「うん。あっちに行く前に……」

「華音。レジに行こう。俺の方も用事は済んだから」


先生も、棚から一冊本を引き抜き、それを持って一歩を踏み出した。

私の左手首をがしりと掴んで。