先生に、いつかは話さなきゃいけない、とは思ってた。



でも、なかなか言い出せないまま、とうとう逃げ場を無くしてしまった。



先生に出会う前の私なら、迷わずこの【将来】を選んだだろう。

それが、亡くなったお爺ちゃんやお母さんが守りたかったものだったから。



……でも、今は……。



「イタリアに住んでる私達のお婆ちゃんが、小さなワイナリーを営んでるんだよね」



自分の考えを纏めるように、一言一言、言葉を選んで先生に説明していこう。


なんとか、このどうにも出来ない気持ちを分かって欲しい。


「ワイナリー?ワイン工場か何か?」

「工場だけじゃなくて、農場も。田舎の小さなワイナリーだから、働いてる人も少ないんだけど、アグリツーリズモとかもやってて……」

「……工房体験できる旅館みたいなもん?」

「ちょっと違う。で、そのワイナリーは、50年ぐらい前に、お婆ちゃんと日本人のお爺ちゃんとで始めたワイナリーで。それまで保守的な製造法方を守ってきた土地に、革新的な技法を持ち込んで新しいワインを作ったのね。それからいくつかは、世界でも有数のワインを出して世界一の賞を貰ったりしたんだけど……」

「……すげぇな、それ」



こく、と頷いてまた躊躇する。