あまり長続きしない俺のオンナ関係の中で、割と長く続いたヤツ。



それが花菜だった。




アイツは俺が他のオンナで遊ぼうが何しようが、煩く詮索するような事はしなかった。



かと言って、遊んでるのがバレても、取り乱しもせずただ無言で平手打ちを食らわせるとか、そういう事ぐらいでしか自分の感情を露にしない。


気がつけば他のオンナはいつの間にか俺の前から消えていて、最後にはいつもアイツが残ってた。



遊んでも最後には謝罪を受け入れるから、最初は都合がいいオンナだと思ってたが、自分を押さえつけているようにも見えるその性格に、耐えきれなくなったのは俺の方だった。




嫌なら嫌だとはっきり言えばいい。



なのに、何で自分を殺して我慢する?



それが解せなかった。



だが、本当は違ったのだ。



花菜は、自分の意思を殺していたのではなかった。



もう少し早くにその事に気づいていたら、もっと違う結果になったのかも知れなかったのに、この時の俺には、そんな事にすら考えが至らなかった。

職員の顔と名前を一人一人確認するためにゆっくり一同を見回した花菜の視線が、俺で止まる。

アイツも、俺が誰だか分かったのだろう。

「数学科は山口先生と櫻先生になりますので、このお二人に授業の進行状況などは相談してみて下さいね」


見間違いじゃない。

アイツは俺に視線を合わせたまま、迷わず「……はい」と言った。



まだ俺に、未練でもあるのだろうか……?


いずれにしても、嫌な予感がする。