「……ごめん。私、好きな人いるから」


だってそれしか言えないじゃん。私が好きなのは《先生》だけだし。



「そ…か。ごめん。いきなり知らない奴に告白されても困るよね」



その男子生徒は、痛々しくも爽やかに微笑んだ。



「んと……。困るっていうか、何で今日はこういうのが多いかな、っていうのが……分かんなくて」



ホントに今日は何なんだよ。朝からこんなのばっかりだ。



「あぁ、多分皆昨日のラリーを見に行った奴ばっかりだと思うよ。雲母さん、一番上で見てたでしょ?その時の、なんつーか雲母さんの雰囲気がいつもと違くて……。いつもだと、近寄りがたいって感じなのに、昨日はすごく可愛いって感じがしたんだ。だから、かな」



あははとその男子生徒は笑い、「ごめんね、忘れて!」なんて言い残して去っていった。



……近寄りがたい雰囲気、って。自分じゃ気付かなかったけど。



一人悶々とその場に立ち尽くしていると、背後から背中をポンと叩かれた。



「……モテ期襲来か、雲母?」

げ。鷹嘴先生だ。