深層融解self‐tormenting

あっという間に駐車場から消えた2台を案じていると、遊馬が「華音!こっち!!」と、崖っぷちを指差した。


崖の下を見ると、追い掛けっこをしているように、2台の車はぴったりとくっついて失踪している。


「あれマジで全開にぶっちぎってやがんな」


遊馬が呟くと、後輩君らしい男の子が「二人ともマジだ。ガチやべぇッすね…」とか言っている。


私が見ると、兄貴の黒い車は先生を先に出させないように、一番道の端に近いところを走ったままだ。

だから、先生が前に出られないように見える。


「凱のライン取りも直線では、なかなかなんだけどなぁ……」


遊馬がボソッと呟いた。


「兄貴のせいで、先生が前に出れないじゃん。あれ、ズルくない!?」


指を差して怒ってみせると、遊馬は「ちげーよ」と、更に遠くを指差した。


「この峠には3つのコーナーがある。今奴等が過ぎたので1つ目。2つ目は丁度真ん中辺り。で、俺が見るところファントムは多分最後のコーナーで勝負を仕掛ける」


自信を持ってそう告げる遊馬に疑問を抱き、「何でそんな事分かるの?」と聞いた。


「凱のヤツ、直線でタイヤの速度を落としてねぇままコーナーに突っ込んでやがる。あれじゃin、out、outだ。コーナー攻めで一番やっちゃいけねぇライン取りだな。それに引き換えファントムの方は、理想的なout、out、inだ。3つ目のコーナーでは凱が恐らく大きく脹れる。恐らく凱は、持たねぇ」

「……アスマさん、まさか凱さんが敗けるってんですか!?」


激昂した後輩君が、カッと遊馬に食って掛かった。


「ファントム、アイツわざとらしく後ろからくっついて行ってるが、冷静に仕掛ける隙を狙ってる。先に出ちまったプレッシャーもあるからな。ま、凱も人間だ。一度ぐらい敗ける経験も必要だろうさ」


事も無げに言う遊馬を横目に、私はしっかりと二人の車を見つめていた。

気が付けばフェンスに爪を立てていたらしく、爪に錆びた鉄が入り込んでている。