「何か飲む?」

先生が途中でコンビニに車を停めて、そう聞いてきた。

「あ、じゃあ……あればミルクティー」

それを聞いた先生が「お前本当に紅茶好きなのな」なんて言ってきた。何だよ。紅茶好きだよ文句ありますか?

「何むくれてんの。今買ってくるから、ちょっと待ってろ」

「やだ。私も行く」


返事を待たずに、無理矢理隣に立って手を繋いだ。


「……わお。大胆」

うっさい。今日日の女子高生たる者、この位できなくてどうします?


「本音を言えば、すげぇ嬉しいけど」

「……私は嬉しくなくなくなくない」

「意味分かんねぇ。つーかそのツンは、いつになったら出張してくれる訳?」

「意味分かんない。ツンデレじゃないし」

「……は!お前がツンデレじゃなかったら何なんだよ!?」

「………たまにヤンデレ」

「あ……そ。病んでる訳ね。分かるかもー」


一人納得した先生が、さっさとレジに並んでしまった。

てゆか、何で私がヤンデレで納得するんだよー!?そこは否定してよね!!

車に戻ってペットボトルを開けると、先生がぼそりと言った。


「今日の走りには、お前は乗せないから」


……えー?何で!?


「……やだ」


また、車で走ってもらいたいのに。


ぷー、と頬を膨らませると、私の頭をかしかし掻き回しながら先生が続けた。


「何、また峠、走りたいのか?」

「うん」


こくん、と頷くと「しょーがねーな」と言った先生が、少し考えてから呟いた。


「じゃ、凱とのバトルが終わったら違う峠に行くか。隣の神楽坂に。っつーのも、凱はホラ、伝説のトップだったわけ、今でも信仰者は多いし。そんな伝説的なボスが久々に表舞台に出るとなれば、ギャラリーの数も自然と多くなるから……」

「なるから?」

「こっちも本気出してイかないとヤバイ訳ね。こないだお前を乗せてた時は、MAXまで力出してないから。このクルマ」

へ?あれでMAXじゃないの!?

「あれ以上出す時は、余計な事考えてる余裕なんてないから。お前が横にいると、どうしても気が散って操作を誤る可能性があんの。だから……」

「分かった。大人しく待ってる」

ちょっと兄貴に先生盗られるみたいで悔しいけど。