「……行くぞ。今日は少し遠くに行くから」

ん、と頷いて中の凱に声をかけた。

「兄貴、先に行くからね!」



おー、という返事は遊馬から返ってきた。


外に出ると、先生がポケットに手を突っ込んだまま遊馬の車をチェックしていた。


「……まぁ、速いっちゃー速いけど……」

「速いけど、何?」

「いや、凱は別に勝ち負けにこだわってる訳じゃなさそうだな、と思っただけ」

そんな事、あるのかな?

だって兄貴は昔から勝負に負けるのが大キライな性分だったのに。

それに、勝つ為に先生とバトルするんじゃないのなら、一体何のために……?



今回だけは兄貴が考えている事が分からず、胸に少し不安を残して、私は先生の車に乗り込んだ。