激昂しかけると同時にインターフォンが鳴った。


「こんばんはー。櫻ッス」

「ほら来たぜ、彼氏サンが」

「五月蝿い、遊馬黙ってて」

「こえー」

ヘラヘラ笑うその顔をぶん殴りたいたい。あ、駄目か。

遊馬だとすぐ避けられるし。じゃあ釘バットならいいかな?


なんて物騒な思考を頭の片隅に追いやり、私は玄関先へ向かった。


「……わりぃ。遅くなった」

「……おそいの、やだ」

『先生に早く会いたかった』なんて、本人を目の前にして言いたくないし。

可愛い性格の女の子だったら『ううん。全然』なんて言えるだろうに。



だって遅くなったら、一緒に………。


「……二人で過ごす時間、減るじゃん……」


小声だから大丈夫だよね?

先生の顔が赤いけど気のせいだよね。

先生は私服に着替えていて、グレーのボリュームのあるハイネックのシャツに白いパンツという服装で、ちょっと寒そうだな…なんて思った。

学校帰りからそのまま来るんじゃないかと期待したのは、先生のスーツ姿を見てみたかったから。

スーツだと色気3割増しって言うし。

まさか先生、授業中それに眼鏡なんて掛けてないよね?

鷹嘴先生はたまに眼鏡を掛けるけど、その度に女の子達が「レアモノだっ」なんて言って騒いでるから。



………どうしよう。私、ホントに重症だ。