深層融解self‐tormenting

それでも、蒼季先生と離れたくないと思うのは……。


これが、恋ってヤツなのかな?

めんどくさいけど、手放したくない。

あんなに拘束されるのを嫌がってたのに、そうされても満更ではない。





でも言いなりになるのも悔しいから、たまにしか弱味は見せないから!









「オマエはアイツのクルマで行くんだろ?」

上にパーカーを羽織りながら兄貴が聞いてきた。行儀悪くも口にはタバコをくわえたままで。


「ちょっと!灰が落ちる!!」


イラついて注意したら、軽く睨まれた。

並の女性ならば失神するような色気を含んでいるらしいその流し目も、妹の私には「なにカッコつけてんの?コイツ?」ぐらいにしか思えない。

それを見て、ソファーに座る兄貴の友人の遊馬(あすま)が笑う。


遊馬は昔から兄貴とつるんでいる、おっさん臭い容貌をしたゴツゴツしたヤツだ。

無精髭を剃らずに放っておいてるから、余計におじさんぽく見える。

だけどこれでも兄貴と同じ年。小学校の頃から兄貴といつも一緒にいる、私にとっても仲間みたいなもの。


「凱に文句言える女なんて華音ぐらいのもんだよな。お前昔っから気ぃ強かったし」

「余計なお世話」


先生と兄貴の【バトル】まで、あと2時間ほど。