いきなり先生に話しかけられた私は唖然とするしかなくて、こくこくと頷いた。


先生は、手を振ってくすりと笑い、車を出した。


「まさかお前が付き合ってたのがアイツだったとはね」

「ファントムって、何?」



家に入りながら兄貴の背中を窺う。



「俺らが高校の頃、氷室峠を根城にしてたバトルで負けなしだった峠族って奴」

「峠族って何?」

「純粋にドライブテクニックで速さを追及する奴等のコトさ――ファントムには他の峠族やゾク、チームの奴等が何人もバトルを挑んだけど、みんな返り討ちに遇った。ウチの特攻隊長も絡んだけど、全然相手にならなかったよ。因みに言うと、喧嘩の方も俺並みに強ぇらしい」




私に話ながら、兄貴はくすくす笑っている。




昔は兄貴がこんな顔をするのをよく見てた。




出入りをする前の、ヤバい笑みだった。




今度の相手は、先生………――――。