ヤバい、先生逃げて!!


「……昔、ウチの特攻隊長が世話んなったよな?」


凱のそれはもはや確認じゃなくて、詰問で。


それに返す先生も薄ら笑っている。


「覚えてねーな。オマエの現役時代?heavenの奴?」



凱はゆるりと仮面のように口角を上げて笑った。



「氷室峠に棲む白い亡霊。俺らが高校ん時に突然表れた。誰がバトルを吹っ掛けても、今まで一度も負けたことが、ない。最近あんまり聞かないけど、何してた?」



兄貴がこの笑顔を見せた時は危険だ。



獲物を見つけた猛獣の唸り。



「忙しかったから」




そして、先生も、また。




「勝ち逃げってイイだろ?」



猛禽類の牙を剥き出している。



「………氷室峠の白い[ファントム]ね……」


……[ファントム]って、なんだろう?



「今はほとんど行ってないけどな」


二人の会話が分からず、おいてけぼりのような寂しさに胸が痛くなる。


「……ヤってくんない?俺と」