深層融解self‐tormenting

光のような速さで車は坂を降りきってしまった。 もっとずっと走っていたかった。


体が少し震えているのは、怖いからじゃない。





楽しくて興奮してるから。



「あーお前震えてるぞ。怖かった?」



俯いたままの私を見て、先生が心配そうに言う。



「勿論昼間はこんな馬鹿げた運転はやらかさねーよ。仮にも教師だし。夜、車通りが皆無の峠と時間を選んでやってんだ。後はサーキット場が主な棲息地なんだけどな」



言い訳めいた先生の発言に、私はと言えば。



「……もっかい」

「…は?」

「もっかいやりたい!すんごい楽しい!先生、お願い、もう一回やって?」



こんなに楽しいコト、一回で終わりたくない。


だから、手まで合わせて先生にお願いした。


「お前……。怖くなかったワケ?」


すぐ終わっちゃう人気テーマパークのアトラクションなんか、全然目じゃないぐらいにハマってしまったようだ。



「楽しかった!ね、お願い?」



舞に言われた【可愛い】のポーズ、小首を傾げて上目遣いで更にお願いしてみる。


フ、と先生は笑い、そして私に顔を近づけた。


「お前が俺の彼女になるってんなら、好きなだけヤってやるけど」



車で坂を降りながら、実はもう決めてた。


先生にそう言われたら、返事をしようって。


だから、迷わず


「いいよ」って、応えた。