バイキングは既にアイドルタイムで、お客は疎ら(まばら)だった。


あいた席に座り、各々食べたいものを持ってくる。


……なんで特上カルビだけこんなにあるんだよ!!二人で同じこと考えてたのか、失敗。


「……カルビだけいっぱいあるー……」

「嬉しいだろ」


うん。嬉しいからこれ一人で食べてやんよ。


「ところでお前さ」

「うん?」

「夜何時までなら遊んでいいの?」



あ?いきなり何を言い出すんだこの変態。



「教えなーい。だって、ヤらしい事されそうだもん」

「ちっ…げーよ!!そうじゃなくて!なんつーか、その……お前に、凄い世界を見せてやりたくて、だな」

「……?凄い世界?」



何だろ?



「お前の兄貴の…凱の世界とは違う、俺の世界。とにかく、ハマるから。今日9時頃出て来れね?」



9時なら……全然大丈夫だけど。でもさ。


「言っとくけど、ヤらしい目的じゃねーから」

「……どこ行くの?」

「頭塚(こうべづか)峠。お前の家からなら、その峠が一番近い」


峠?先生も、兄貴みたいに昔ヤンチャな事をしていたんだろうか?



……とすれば、ちょっと気になる。


「んー…。じゃあ、ちょっとだけ」


所詮私は色恋より、荒事の方が好きなんだなぁ。



そして、珍しくアキせんせーが、いつものにやけた笑いじゃなくふわりと優しく笑って見せたもんだから、思わずドキッとしてしまう。


そんな事を本人に言ったらとんでもない事になりそうなので、言うのは止めておいた。