深層融解self‐tormenting

そして翌朝。朝の10時に春臣の家のインターフォンをこれでもか、とばかりに連打した。

私にすれば軽いスキンシップのつもりだが、春臣は本気でこれを嫌う。

嫌がらせだもんねーだ。てゆーかだだっ広い家に一人暮らしだし別にいいじゃん。


だが意外にも意外、鳴り響くインターフォンのけたたましさに耐えかねて出てきたのは、見知らぬ若い男だった。


「お前、誰?」


開口一番に私が発した第一声。


顔はまぁイケてる方?無駄に整いすぎてる兄貴と同じぐらいに良い方だと思う。

身長は割と高め。サラサラの黒髪でシャープな顔立ちには、どこか暗い陰が差しているようにも見える。



「人に名前を聞く前にまず自分から名乗れよ」


ぶっきらぼうにその黒髪は言った。


「知らない奴に個人情報を漏らすほど馬鹿じゃないし。いいからあの女の敵を出せよ」


溜め息をついた黒髪は頭をわしわしと掻くと


「宮藤サンなら二日酔いでぶっ倒れてんだけど。俺は櫻っつー宮藤サンと同じ学校で働いてる数学教師。つか、ホントにお前誰?」


「私は華音(かのん)。この家の隣に住んでる。今日は春臣に数学の課題教えてもらう約束だったんだけど!!早く起こせよ」

「お前、中学生?」

「高3!!東高校の!!」


言い捨てると私は靴を脱ぎ捨て、春臣が寝ているであろう居間に向かう。

居間には知らない人が二人、あとはうちの学校の歴史科の鎌崎先生、そして物理の鷹嘴先生も混じっている。


ごろごろと男ばかりが雑魚寝している隙間を縫って春臣に近づくと、襟首を掴んで思いきり揺らした。


「春臣早く起きて勉強教えろよ!!」