深層融解self‐tormenting

もしかして、ゆずが治してくれた……?



「ああ、分かった」

けれどもそんな非現実的な私の思考に横槍を入れたのは先生だ。

「ここの温泉、鉄分がかなり多く含まれてたんだったよな。それで傷の治りが早いんだ」


確かに夢で見たのと同じく、足場や洗い場には鉄分らしき堆積物が積もって固まっている。



でもなぁ。この場合は『ゆずが治してくれた』ってオチの方が良い話になるじゃんよ。



上げていた片足をまた湯船に浸けようとしたら、先生に軽々と持ち上げられてしまった。


それに、お腹に回っていた先生の左手は段々上に移動してきてるし。


まさかここで如何わしいコトをするつもりですかっ!?


「……今日のはマジで肝が冷えた。華音が連れて行かれるんじゃないかって。焦った」

「心配性だなぁ。もう本当に大丈夫だって」


ゆずのお父さんとお母さんが言ってたもんね。

『鎹だった柚希が……』って。

きっと、これからはゆずも安心して皆を見守れるんじゃないかな?



あ、でも。



「先生にしつもーん。《鎹》って、なに?どゆ意味?」

「……は?へ?……お前…知らないの?」


知らないし。



「鎹(かすがい)ってのは、材木と材木を繋ぐために打ち込む、『コ』の字の形をした大きな釘の事。ちなみに他人同士をを繋ぎ止める時の喩えでもあるだろ。『子は鎹』っつーし。てか、お前国語は成績良いのにこんなのも知らねーの?」


むか。馬鹿にされた!


先生を軽く睨んで反抗の意志を示してみた…が、見事にスルーされてしまった。


「……鎹、か。その前にさ、パートナー同士の間でしっかりとした関係を築いていれば、乗り越えられる困難…ってのもあるとは思わないか?」

「?パートナー同士の、関係?」


先生がいいたいのは、つまり……何だ?