それから部屋に行ってみた。
部屋の窓が海に面していて、あの広い海を一望できる。
海はどこまでも穏やかな凪で、人の命を飲み込んだものとは思えない。
だけど、それを知っても怖くないのは、きっとゆずが優しい子だと分かっていたから…なんだろう。
窓辺に佇む私の後ろから、先生がそっと体を包み込んだ。
「……どこにも、行くなっつーの」
「まだ心配?……ゆずのご両親がああいう風に決めたんだから、もう大丈夫だってば」
「だけど……」
「ねー!旅館の宴会場タダで貸してくれるって言うんだけど、お前ら何しでかしたのー!?」
先生のお小言は、春臣のニヤけた茶化した声に掻き消された。
その声で、夢現の世界からいつもの現実に引き戻されたような気がして、思わず先生と二人でぷふっと吹き出した。
「あの人達がどこにでも着いて来るんだもん。オバケだって逃げ出すよ」
「……だな。宮藤サンなんか美人の幽霊ならナンパしてそうだしな」
そんな事を言いながら、皆が待ってる小宴会場へと歩きだした。

