はあー、と深く深呼吸をして息を整えたセンセーにちょっと腹が立った。だって分かんないんだもん。


「今、分かるように説明するから……」


それからお昼も食べずにみっちり5時間、数学のテキストを攻略しまくった。





「………おなかすいた………」

「あ?もう3時!?早ぇな、オイ」

「………もうだめ。おなかすいた………」

「分かったから。どこ?何食いたいの?」


後片付けを終えた私を、さっきまで鬼のような形相で罵倒していた人とは思えないほどの爽やかさで見つめている。


本当にこのセンセーは、何を考えているのか分からない。


「んと……。やきにく。かっこはあと」

「んーだよそれ。食い放題な」



やったっ!!


近場の焼肉バイキングにはお寿司もスイーツも贅沢なほど揃っている。

うちはお父さんが夜遅くじゃないと帰って来ないし日曜日はいないし、兄貴はほとんど帰って来ないから、家族が揃うのが稀だった。


だから、滅多に行けないんだ。食べ放題、嬉しいなぁ!


「すげー嬉しそうだな」


アキせんせーが苦笑する。


そして再び、あの乗り心地が悪い車に乗り込んで出発。


助手席は辞退させて貰うつもりだったのに、半ば強制的に座らせられた。


だけど、今日はクッションが敷いてある。


「お前が乗り心地悪いっつーから、下に敷いといた。酔わせるのも可哀想だし」


お?私の事を考えてくれたのか?


惜しいなぁ。変態じゃなきゃお付き合いも考えても良いけど。